治療目標は、冠動脈疾患の既往、高リスク病態、性別、年齢、喫煙などを考慮して個別に医師が設定する。危険因子の種類や程度に応じて、きめ細かく目標設定がされている。服薬指導時は、患者にLDLの目標値を必ず確認する。薬剤師の判断だけで、目標値を確認しないまま安易に言及しないことが大切である。
冠動脈疾患またはアテローム血栓性脳梗塞がある場合
LDL | non-HDL | |
目標値 | < 100 < 70※1 | < 130 < 100※1 |
(単位:mg/dL)
狭心症、心筋梗塞などの冠動脈疾患またはアテローム血栓性脳梗塞(明らかなアテロームを伴うその他の脳梗塞も含む)の既往歴がある患者は、LDL100未満を目標値とする。ただし、急性冠症候群、家族性高コレステロール血症、糖尿病、冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞の4病態のいずれかを合併する場合、LDL70未満を考慮する※1。
高リスク病態がある場合
LDL | non-HDL | |
目標値 | < 120 < 100※2 | < 150 < 130※2 |
(単位:mg/dL)
冠動脈疾患等がなく、糖尿病(耐糖能異常は含まない)、慢性腎臓病(CKD)、末梢動脈疾患のいずれかの病態がある患者は、LDL120未満を目標値とする。ただし、糖尿病において、抹消動脈疾患、細小血管症(網膜症、腎症、神経障害)合併時、または喫煙歴ありの場合は、LDL100未満を考慮する※2。
その他の場合
目標値 | LDL | non-HDL |
低リスク | < 160 | < 190 |
中リスク | < 140 | < 170 |
高リスク | < 120 | < 150 |
(単位:mg/dL)
下記の久山町スコア表より、合計点数を算出して、ポイント合計から、低リスク・中リスク・高リスクの判定を行い、それぞれの目標値とする。また、80歳以上の高齢者は、個別に医師が設定する。
久山町スコア表
性別 | ポイント | 喫煙 | ポイント | 糖代謝異常 (糖尿病は含まない) | ポイント | ||
女性 | 0 | なし | 0 | なし | 0 | ||
男性 | 7 | あり | 2 | あり | 1 |
収縮期血圧 | ポイント |
< 120 mmHg | 0 |
120 – 129 mmHg | 1 |
130 – 139 mmHg | 2 |
140 – 159 mmHg | 3 |
160 mmHg < | 4 |
血清LDL – C | ポイント | 血清HDL – C | ポイント | |
< 120 mg/dL | 0 | 60 mg/dL < | 0 | |
120 – 139 mg/dL | 1 | 40 – 59 mg/dL | 1 | |
140 – 159 mg/dL | 2 | < 40 mg/dL | 2 | |
160 mg/dL < | 3 |
ポイント合計によるリスク判定
ポイント合計 | 40 – 49 歳 | 50 – 59 歳 | 60 – 69 歳 | 70 – 79 歳 |
0 | 低リスク | 低リスク | 低リスク | 中リスク |
1 | 低リスク | 低リスク | 低リスク | 中リスク |
2 | 低リスク | 低リスク | 中リスク | 中リスク |
3 | 低リスク | 低リスク | 中リスク | 中リスク |
4 | 低リスク | 低リスク | 中リスク | 中リスク |
5 | 低リスク | 低リスク | 中リスク | 中リスク |
6 | 低リスク | 低リスク | 中リスク | 中リスク |
7 | 低リスク | 低リスク | 中リスク | 中リスク |
8 | 低リスク | 中リスク | 中リスク | 高リスク |
9 | 低リスク | 中リスク | 中リスク | 高リスク |
10 | 低リスク | 中リスク | 中リスク | 高リスク |
11 | 低リスク | 中リスク | 中リスク | 高リスク |
12 | 低リスク | 中リスク | 中リスク | 高リスク |
13 | 中リスク | 中リスク | 高リスク | 高リスク |
14 | 中リスク | 中リスク | 高リスク | 高リスク |
15 | 中リスク | 中リスク | 高リスク | 高リスク |
16 | 中リスク | 中リスク | 高リスク | 高リスク |
17 | 中リスク | 中リスク | 高リスク | 高リスク |
18 | 中リスク | 中リスク | 高リスク | 高リスク |
19 | 中リスク | 高リスク | 高リスク | 高リスク |
参考文献
動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版より引用改変
総コレステロールから善玉コレステロール(HDL)を引いた数値で、LDLを含めたすべての悪玉コレステロールを示す検査値