処方せんの処方医に、疑義照会が必要かどうか判断してみよう。どの箇所で疑義照会が必要かまたは不必要か、分かれば正解とする。問題を解く制限時間は90秒である。必ず時間を計って、問題に取り組もう。
画面では見にくいと思うので、下記の「問題の印刷」よりプリントして問題に取り組んだ方が実践的である。職場の薬剤師に問題を解けるかどうか試しても良い。
裏・処方鑑査:第4問
問題の印刷
4分類法
・ヘルペス治療薬 | ||||
アメナリーフ錠 | NM | 抗ヘルペスウイルス | ||
・疼痛薬 | ||||
アセトアミノフェン錠 | NM | 解熱鎮痛 | ||
・降圧薬 | ||||
エンレスト錠 | RR |
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・浮腫治療薬 | ||||
アゾセミド錠 | NM | ループ系利尿 | ||
・脂質異常症治療薬 | ||||
ロスバスタチンOD錠 | NM | スタチン | ||
・CKD治療薬 | ||||
フォシーガ錠 | NM | SGLT2 | ||
・貧血治療薬 | ||||
ダーブロック錠 | NM | HIF活性化薬 | ||
・去痰薬 | ||||
カルボシステイン錠 | NM | 気道粘膜修復 | ||
・化膿性疾患治療薬 | ||||
クラリスロマイシン錠 | NM | マクロライド系抗菌 | ||
・鼻炎患治療薬 | ||||
フェキソフェナジン錠 | NM | 抗アレルギー |
問題の答え
制限時間になったら「答えと解説」を押してください。クリックすると表示されます。
・問題の答え
あなたの判断が答えである。
書籍「誰も教えてくれなかった 実践薬学管理」(以下、実践薬学管理)で紹介されているPISCS(CR-IR法)より計算すると、アメナリーフを高度腎障害(eGFR:30)かつCYP3Aを強く阻害するクラリスロマイシンを併用している患者に投与すると、添付文書には記載されていないが、アメナリーフのAUCが約5倍まで上昇する恐れがあると推測される。
・処方鑑査のポイント
AUCの上昇がどれくらいのリスクに相当するのか考察する。インタビューフォームの薬物動態に関する項目より、アメナリーフは投与量に比例してAUCが上がる薬ではないことがわかる。下表より、投与量を6倍にしてもAUCは約3.2倍にしかならない。単純計算すると、AUC約5倍はアメナリーフ約4400mg(22錠)に相当する用量となる。この数値が、危険かどうか考える。
AUCの上昇がどれくらいまで許容されているのか考察する。添付文書の薬物相互作用より、CYP3Aを強く阻害するリトナビルと併用した場合、アメナリーフのAUCは約2.6倍(2.34〜2.89)になるが、併用注意なので通常どおり処方可能である。つまり、AUCの上昇幅が2.89倍までなら問題ないと判断できる。これ以上、AUCが上昇したケースは記載されていないので、今回処方のAUC約5倍は未知の領域となる。ちなみに、高度腎障害の患者では、AUCが約1.8倍になる。
参考として、ベルソムラとCYP3Aを強く阻害するケトコナゾールの併用では、ベルソムラのAUCが約2.8倍になる。併用禁忌であるクラリスロマイシンでは記載されていないが、2.5倍くらい上がるのではないだろうか。減量考慮であるジルチアゼムでは約2倍である。AUC上昇におけるリスクは薬品ごとに異なるので注意してほしい。数値だけを見て、判断しないことだ。
スボレキサントの薬物動態に対する併用薬の影響
1) ケトコナゾール本剤 (4mg単回) とCYP3Aを強く阻害するケトコナゾール (400mg 1日1回経口反復) を併用した際、スボレキサントのCmax及びAUCは23%及び179%増加した。
2) ジルチアゼム本剤 (20mg単回) とジルチアゼム (240mg 1日1回反復) を併用した際、スボレキサントのCmax及びAUCは22%及び105%増加した。
ベルソムラ:添付文書より引用
ベルソムラのようにAUC約2倍は減量考慮で、AUC約2.5倍で禁忌相当と判断基準がわかれば良いが、アメナリーフではAUC上昇による禁忌がないため判断できない。ここで重要なことは、副作用が用量依存的に増えているかまた重大な副作用があるかである。インタビューフォームを見る限り、2400mg投与しても副作用が増えたという記載はないので、危険となる用量がどれくらいなのかわからない。また、重大な副作用として「多形紅斑」があるが、薬との因果関係が深いとは言い難い。
・私の考え
アメナリーフによる腎障害は検査レベルでは報告されているが、実質的に問題となる腎障害はおこっていないため、AUC約5倍になっても腎障害がおこる恐れは低いと判断する。私なら、疑義照会をしないで、服薬フォローで対応する。処方変更を提案するための根拠が、AUC約5倍と腎障害の悪化懸念だけでは難しいと思った。賛否あると思いますが、あなたならどうしますか?
・参考文献
誰も教えてくれなかった 実践薬学管理より引用
アメナリーフ:インタビューフォームより引用
書籍の紹介
今回の問題にしたアメナリーフ以外にも様々な考えさせられる事例が紹介されています。
・これからの薬物相互作用マネジメント 臨床を変えるPISCSの基本と実践 第2版
PISCSをもっと学びたい方はこちらの書籍がおすすめです。
今回の問題は、書籍「誰も教えてくれなかった 実践薬学管理」で紹介されているアメナリーフのような処方がきた時に、疑義照会をするべきかどうか考察するために創作した問題です。著者の許可はとっていないので、勝手にコラボ企画となります。