処方せんの処方医に、疑義照会が必要かどうか判断してみよう。どの箇所で疑義照会が必要かまたは不必要か、分かれば正解とする。問題を解く制限時間は90秒である。必ず時間を計って、問題に取り組もう。
画面では見にくいと思うので、下記の「問題の印刷」よりプリントして問題に取り組んだ方が実践的である。職場の薬剤師に問題を解けるかどうか試しても良い。
裏・処方鑑査:第3問
問題の印刷
4分類法
・狭心症治療薬 | ||
ニコランジル錠 | RR | 冠血管拡張 確認)タダラフィル・ED治療薬は併用禁忌 |
ニトロペン舌下錠 | RR | ニトログリセリン 確認)タダラフィル・ED治療薬は併用禁忌 |
・降圧薬 | ||
ジルチアゼム塩酸塩Rカプセル | NM | カルシウム拮抗 |
・下剤 | ||
酸化マグネシウム錠 | NM | 下剤 |
・胃薬 | ||
ラベプラゾールNa錠 | NM | PPI |
・睡眠薬 | ||
ベルソムラ錠 | RR | オレキシン拮抗 確認)クラリスロマイシンは併用禁忌 |
問題の答え
制限時間になったら「答えと解説」を押してください。クリックすると表示されます。
・問題の答え
疑義照会が必要でない。
ベルソムラは、CYP3Aを阻害する薬剤(ジルチアゼム)と併用する場合、10mgへの減量が推奨されているが、15mgのままで良い。今回処方よりゾルピデムが削除されたので、その効果を補うため、敢えてベルソムラとジルチアゼムを併用して、ベルソムラの効果増強を期待していると推察できるため。
・処方鑑査のポイント
医師が意図的に併用注意をつくり、効果増強を狙った特異なケースである。患者は高齢者なので、ベルソムラを20mgに増量すれば、添付文書相違となる。ジルチアゼムの併用は10mgへの減量を推奨なので、添付文書相違にはならない。副作用に注意する必要はあるが、ゾルピデムが削除されているので、それほど気にする必要はないと考える。今回の問題で最も重要なポイントは、この意図を理解して服薬指導できるかである。
患者の訴えより、ジルチアゼムに睡眠効果があると勘違いしているが、そのような効果はない。服薬指導では、①睡眠薬をベルソムラ単独にしたい理由、②降圧薬をジルチアゼムに変更した理由、③併用することで起こる注意点、この3点を患者に伝えると良い。医師の意図が理解できれば、服薬指導が変わる。服薬指導が変われば、薬歴が変わる。医師の意図を理解した薬歴を書けているかどうかで、薬剤師の質はわかる。
この服薬指導のポイントは、ゾルピデム=強い睡眠薬と表現して悪者扱いすることで、医師が意図する方向へ患者を動機付けしている。また、副作用の説明をしたまま服薬指導を終えると、患者は味方であるベルソムラに対してネガティブな印象を持って帰ることになる。できればポジティブな印象を与えて帰したいので、「これで体調は良くなりますよ」という言葉によるプラセボ効果をかける。3〜7日後くらいに寝つきや副作用の状況を確認するため服薬フォローをしてもいいだろう。
・睡眠薬の切り替えについて
ベンゾジアゼピン系睡眠薬(BZD)は、転倒や認知機能低下のリスクがあるため、高齢者にはなるべくオレキシン受容体拮抗薬(OX)などを使いたいと考えている医師は多い。そのため今回処方のようにBZD→非BZD→OX等へ切り替えとなった時は、医師の処方意図を踏まえて服薬指導をする。今回処方では、切り替えの流れを見やすくするため急ピッチで変更しているが、実際は患者の状態を見ながらゆっくり変更していくことが多い。
・ベルソムラとBZDの併用について
用法・用量に関連する使用上の注意より、ベルソムラは他の睡眠薬と併用した時の有効性及び安全性は確立されていないと記載されているが、実際は併用されることがある。BZDからOX等に切り替えると反跳性不眠を起こす恐れがあるので、今回処方のように併用したあと、BZDを削除または頓服にして少しずつやめていくケースが多い。
ベルソムラ、デエビゴ、ロゼレムが処方されている過去の薬歴を見返して、BZD→非BZD→OX等の切り替えの流れがあるか確認してみよう。医師により処方に特徴(薬剤の種類・用量など)があるか分析すれば、あなたにしかできない疑義照会ができる!
・参考文献
「強い睡眠薬の服用を続けると、転倒や認知機能が低下するリスクがあるので、ベルソムラ単独にしたいと考えていますが、急にゾルピデムをやめると寝つきが悪化する恐れがあります。そこで、ジルチアゼムという降圧薬は、それ自体に睡眠効果はありませんが、ベルソムラの効果を高める作用があるので、ゾルピデムがなくなった分の効果を補う目的で処方されています。通常よりベルソムラの効果が上がるので、ふらつき等に注意する必要はありますが、これで良く眠れるようになりますよ。」